元音楽教師めりーです。今回は、あの有名な「きらきら星」について解説します。
「きらきら星変奏曲」という名で知られる、こちらの音楽。
モーツァルトが作曲したことでも有名ですが、実はこの曲は、ある音楽の旋律を引用して作られたもので、原曲は他にあるのです。
では、その原曲とはいったいどのような音楽なのでしょうか?
というわけで、この記事では、そんな「きらきら星変奏曲」の原曲やその他のアレンジ、演奏・鑑賞時のポイントをまとめてみました。
原曲は恋の歌!「きらきら星変奏曲」の正式名称は?
モーツァルトが記した楽譜を見ると、曲名は以下のように書かれています。

つまり、「きらきら星変奏曲」の正式名称は「フランス歌曲『ああ、お母さん聞いて』による12の変奏曲」で、歌曲の旋律を用いて作られた変奏曲だということが分かります。
あのメロディはモーツァルトが作ったわけではなかったのですね…
→変奏曲とは?
変奏曲は、主題の形を様々に変えながら繰り返す形式で作られた曲のこと。
形を様々に変えるというのは、平たく言えば、旋律やリズム、拍子、アーティキュレーションなど音楽の要素を変化させるということです。
簡単な例を挙げるとこんな感じ。

1曲の中で、曲の雰囲気がコロコロ変わるので、演奏を飽きずに楽しめます。
原曲『ああ、お母さん聞いて』はどのような音楽?
「きらきら星変奏曲」のモチーフとなった原曲『ああ、お母さん聞いて』は18世紀末に流行したフランス歌曲(シャンソン)です。
歌詞の内容は、娘が、自分の母親に恋の悩みについて相談するというもの。
では、なぜ「きらきら星変奏曲」と呼ばれているのでしょうか?
「きらきら星変奏曲」と呼ばれる理由は?
モーツァルトがこの変奏曲をつくったのは1781年頃のこと。
それから20年以上経った後に、原曲にイギリスの詩人ジェーン・テイラーの詩を当てはめた替え歌 「Twinkle, twinkle, little star(きらきら星)」が作られました。
この替え歌が世界中で爆発的にヒットしたことで、「きらきら星」という名が定着し、モーツァルトによる変奏曲も「きらきら星変奏曲」として親しまれるようになりました。
※原曲のタイトルよりも「きらきら星」の方が馴染みがあるので、本記事でも「きらきら星」と呼ばせていただきます。
「きらきら星」の旋律を基に作られた音楽は他にもある!
さて、この旋律を用いて音楽を作った作曲家はモーツァルトだけではありません。
他にも多くの作曲家たちが、この旋律を自身の音楽に取り入れていたので、ここではその一部をご紹介します。
短い作品ですが、リストらしい華美なアレンジです。
まさか中間部に「きらきら星」が登場するなんて!初めて気が付いた時は震えました。
ちなみにうっかり忘れがちなのが、「ABCの歌(アルファベットの歌)」も同じメロディだということ!
歌詞とメロディがしっくり合いすぎていて、言われなければ同じだということに気付かないかもしれません。
「きらきら星変奏曲」の演奏・鑑賞時のポイントは?
前述の通り、「きらきら星変奏曲」は主題(テーマとなるメロディ)と、主題を様々な形に変えた12の変奏からなる曲です。
イメージとしてはこんな感じ。(IMSLPダウンロード楽譜より一部抜粋)

実際はもっと複雑ですが、上図のようにリズムなどを変えたり、装飾を施したりした旋律が組み合わさってできています。
ゆえに、何をどのように変えたら、どんな雰囲気・イメージになるのかに着目するのがポイント。
楽譜から読み取ったことを基に、情景やイメージを思い浮かべながら演奏・鑑賞することが大切ですね。
「きらきら星変奏曲」を教材とした授業例
最後に、私がnoteで公開している「きらきら星変奏曲」の鑑賞・創作授業例をご紹介します。
授業の概要
【題材名】変奏曲の特徴を理解し、オリジナル「きらきら星」をつくろう
【対象学年】中学1~3年生
【時間数】4時間扱い(①②鑑賞 ③④創作)
【評価材料】授業に取り組む姿勢、振り返りカード、ワークシート、作品
前半は、イメージした星の様子と音楽を形づくっている要素との関わりを探る鑑賞活動、後半は自身の思い浮かべる「きらきら星」をテーマに創作活動を行うという内容です。
記事では、授業の進め方を紹介しているだけでなく、以下のような指導略案とプリント類もダウンロードできます。

ご興味のある方はこちらから詳細をご覧ください。
まとめ
さて、この記事では「きらきら星変奏曲」の原曲や演奏・鑑賞時のポイントについてご説明しました。
音楽の成り立ちを知ることで、より一層、その音楽が楽しめるようになりそうですね。
というわけで、今回の記事は以上です。
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