音楽史と言えば、バロックや古典派など西洋で発展したクラシック音楽が中心。
では、日本において音楽はどのように発展してきたのでしょうか。
この記事では、日本の音楽史について、ざっくりとした歴史の流れを解説します。
音楽史の授業実践例はこちら
①声楽作品、②器楽作品、③日本の音楽とテーマに沿って音楽史を振り返る授業例です。
3時間分の指導略案と説明例が載っていて、ワークシート(5種類)とパワーポイント資料(25スライド)がダウンロードできます。(詳細はこちら)
日本音楽史の歴史区分
日本と西洋音楽の歴史区分は以下の通りです。

日本では、バロックのように各時代の音楽に名前が付けられているわけではないので、通常の日本史と同じ歴史区分を記しています。
クラシック音楽の中心であるバロック~ロマン派時代は、日本では江戸時代~明治時代にあたりますね。
江戸時代と言えば、日本が鎖国を実施していた頃なので、西洋音楽の流入が遅れ、日本独自の音楽文化が発展したのかもしれません。
それでは、ここからは日本の各時代の音楽について説明します。
奈良時代の音楽
・楽器や舞楽の伝来
古墳時代にも「フエ」などの楽器は存在していましたが、奈良時代に、中国や朝鮮半島から楽器や舞楽が伝来。
この時に輸入された雅楽は貴族の間で、散楽は庶民の間で広まり、日本の音楽の基礎となります。
平安時代の音楽
・雅楽の誕生
奈良時代に伝来された「雅楽」に、日本に古くからある歌や舞と平安時代に新しく作られた歌が合わさって、「雅楽」が国風化されます。
これが日本の雅楽の誕生です。
雅楽は、その後、宮中や貴族の儀式の際に演じられる式楽となります。
→雅楽について詳しくはこちら
関連記事
-

雅楽とは?元中学校音楽教師の分かりやすい解説と授業例
続きを見る
・今様の大流行
中国や朝鮮半島から伝わった歌曲は次第に廃り、日本で新しい歌曲が作られるようになりました。
そのひとつが、今様(いまよう)。
七五調四句の詞型を特徴とし,鼓などの伴奏で歌われていた、当時からすると"現代風"の歌謡曲です。
現存するものの中で最も有名なのは、雅楽「越天楽」のメロディに歌詞を付けた「越天楽今様」でしょう。
今様は元々庶民の間で生まれ、発展したものですが、平安末期には貴族の間でも大流行。
後白河法皇が熱中しすぎて喉を傷めたという逸話も残っています。
しかし、時代が進むにつれてブームは去っていき、鎌倉時代にはほとんど絶えてしまいました。
鎌倉時代の音楽
・琵琶法師による「平家物語」
「平家物語」の文学的価値が認められ、琵琶(びわ)を伴奏に「平家物語」を語る平曲が生まれます。
これを各地に広めたのが、諸国を流浪する琵琶法師です。
また、平曲を作る作曲家のような仕事ができ、日本でも音楽で収入を得る人が増えていきました。
・貴族から武士へ
政治や文化の中心が貴族から武士へと変わり、世の中は武家社会へ。
これまで音楽の中心は貴族が好む雅楽でしたが、武士がこれに興味を示さなかったため、雅楽は次第に衰退。
代わりに、散楽などの大衆的なものが音楽の中心となったのです。
室町~安土・桃山時代の音楽
・能の大成
奈良時代に伝来し、庶民の間で親しまれてきた散楽を基に、観阿弥・世阿弥が能を大成します。
→能について詳しくはこちら
関連記事
-

能とは?元中学校音楽教師の分かりやすい解説と授業例
続きを見る
・三弦の流入
中国から琉球(現在の沖縄)を通じて三弦が伝来します。
この三弦は、のちに三味線へと形を変え、浄瑠璃の伴奏楽器として使われるようになります。
江戸時代の音楽
・文楽と歌舞伎の大流行
竹本義太夫が竹本座を創設するなど、三味線を伴奏楽器とした浄瑠璃が流行し、中でも文楽が人気を博します。
→文楽について詳しくはこちら
関連記事
-

文楽とは?元中学校音楽教師の分かりやすい解説と授業例
続きを見る
また、1603年頃に出雲阿国が始めた「かぶき踊」を基に、歌舞伎が誕生。
江戸時代後期には、庶民の娯楽として大流行となります。
歌舞伎役者の髪型やファッションを真似るなど、当時の歌舞伎は流行の最先端でした。
→歌舞伎について詳しくはこちら
関連記事
-

歌舞伎とは?元中学校音楽教師の分かりやすい解説と授業例
続きを見る
能で流行した演目を文楽や歌舞伎でリメイク上演するなど、それぞれの芸能が影響し合いながら発展していきます。
・ペリー来航と軍楽隊
当時の日本は、戦国時代が終わったと思ったら鎖国となり、海外からの音楽の流入は一時ストップしていました。
ところが、ペリーの来航時に港で軍楽隊の音楽を耳にし、日本人は初めて西洋音楽に触れるのです。
これまで楽器と言えば三味線や箏などが主流だったので、当時の人々はさぞ驚いたことでしょう。
この軍楽隊との出会いが、明治時代の音楽に大きな影響をもたらします。
明治時代以降の音楽
・西洋音楽の流入と滝廉太郎の登場
明治時代になると、西洋音楽(いわゆるクラシック音楽)の演奏会が各地で行われるようになり、軍楽や教育にも取り入れようとする動きが盛んになります。
ですが、西洋音楽の作り方が分からない当時の日本では、元々あった西洋のメロディに日本語の歌詞を無理やり当てはめるのが主流。
これが歌いづらいと大不評でした。
そんな中、滝廉太郎が西洋音楽の音階を用いて「荒城の月」を作曲。
これが日本で初めて作られた西洋音楽とされ、以降は日本でも西洋音楽が多く作られるようになります。
→滝廉太郎についてもっと詳しく!
関連記事
-

滝廉太郎はどんな人?5つのエピソードと代表曲
続きを見る
・音楽が「娯楽」に
時代が進むにつれ、レコードやラジオが普及し、誰もが音楽を気軽に聴くことができるように。
それに伴い、各地の民謡や歌謡曲などが「娯楽」として親しまれるようになり、日本においても音楽は生活の一部となるのです。
まとめ
さて、ざっくりと日本音楽の歴史の流れをご紹介しましたが、改めてまとめるとこんな感じ。

西洋音楽の流入が少なかったためか、日本の音楽は中国や朝鮮半島の影響を受けながら独自に発展したということがお分かりいただけたかと思います。
日本の伝統的な音楽には、クラシック音楽とはまた違った良さがあるので、ぜひいろいろと聴き比べてみてくださいね。
というわけで、今回の記事は以上です。
本記事の内容をまとめたワークシートは以下の授業例の中で公開しています。
リンク
\指導案・ワークシートのダウンロードはこちら/

鑑賞授業
2023/5/26
オペレッタとは?オペラとの違いや有名な曲も合わせて解説
元音楽教師めりーです。 オペラについて勉強していると、たびたび遭遇する「オペレッタ」という言葉。 なんとなくオペラの派生版かな?というような気がしますが、実際のところオペレッタとは何なのでしょうか? この記事では、オペレッタとは何かについて、オペラとの違いやそれぞれの代表曲と合わせて解説します。 目次オペラとは?オペレッタとは?オペレッタとオペラの違いは?オペレッタの有名な曲3選①「こうもり」序曲①「天国と地獄」序曲③「軽騎兵」序曲 オペレッタについて説明する前に、まずはオペラについて。 オペラとは? オ ...
ReadMore
鑑賞授業
2023/4/5
令和版!「魔王」指導案・ワークシートのダウンロード【中学音楽】
元中学校音楽教員めりーです。 この記事では、noteで公開中の「魔王」鑑賞授業例の内容をご紹介します。 授業の進め方にお悩みの方、すぐに使える指導案・ワークシートをお探しの方の参考になれば幸いです。 目次「魔王」鑑賞授業例の内容・「魔王」鑑賞授業の概要・ダウンロード資料「魔王」鑑賞授業例のポイント 「魔王」鑑賞授業例の内容 上の記事では、シューベルト作曲「魔王」を主教材とした鑑賞授業の進め方を紹介しています。 中学校に入学して初めての本格的な鑑賞授業におすすめの内容です。 ちなみに、私は1学期に「ジョーズ ...
ReadMore
自習課題
2023/4/5
すぐ使える!中学校音楽の自習プリント【ダウンロード】
元中学校音楽教員めりーです。 万が一、音楽の授業ができなくなった場合に役立つ自習プリント。 いざという時のために用意しておきたいけど、準備する暇がない!という先生も多いのではないでしょうか? そこで、この記事では、noteで公開中の授業資料から、すぐに使える音楽の自習プリントをご紹介します。 目次まずはこれ!音楽の自習プリント音楽記号・用語一覧プリント練習問題付き!楽典まとめプリントお楽しみ課題!クロスワード まずはこれ!音楽の自習プリント 中学校の学習内容を網羅したプリントです。 楽典(音楽の基礎知識) ...
ReadMore
歌唱授業
2023/3/27
音楽授業における歌唱指導の方法・音取りのポイント
元中学校音楽教員めりーです。 音楽の授業で必ず行う歌唱指導。 にもかかわらず、どのような流れで進めるのか、どのように音取りを行うのかといった具体的な指導法は誰も教えてくれないですよね。 そこで、この記事では私の歌唱指導の方法をご紹介します。 「これが正解!」というわけではありませんが、少しでも皆さんの参考になれば幸いです。 目次歌唱指導って何するの?歌唱指導(音取り)の基本的な流れ1時間目の流れ2時間目以降の流れ歌唱指導(音取り)のコツコツ①常に全員でなくても良いコツ②表現の工夫につなげるまとめ \合唱指 ...
ReadMore
常時活動
2023/3/24
新年度から始めたい!音楽授業におすすめの常時活動
元音楽教員めりーです。 「授業の進め方が分からない」と悩んでいる時は、毎回の授業で行う常時活動を取り入れるのがおすすめ! 常時活動を行うことで、流れが構築でき、授業がしやすくなるからです。 ですが、常時活動は1年間続けることに意味があるので、どのような活動を取り入れるかは慎重に考えなければなりません。 そこで、この記事では、これまでに当サイトやnoteで公開中の音楽授業ネタから、特におすすめの活動を厳選してご紹介します。 参考にしていただければ幸いです。 目次①5分間ミュージック②ミュージックトラベル③今 ...
ReadMore
授業の基本
2023/5/26
中学校音楽科の年間指導計画例(授業実践の紹介あり)
元中学校音楽教員めりーです。 1年間の授業の内容をあらかじめ計画だてておく、年間指導計画。 教科書会社提供の資料を参考にしながら作成している方も多いと思います。 ですが、実際の学校現場では、どの授業をどのタイミングで、どのくらいの時間をかけて行っているか気になりませんか? そこで、この記事では、私が教員時代に行った1年間の授業内容を基に、各学年の指導計画例をご紹介します。 あくまでも目安ではありますが、参考になれば幸いです。 目次中学校音楽科の年間授業時数年間指導計画(中学1年音楽)年間指導計画(中学2年 ...
ReadMore
ICTを活用した音楽授業(指導案・ワークシート)まとめ
元音楽教員めりーです。 この記事では、noteで公開中の授業例の中から、ICTを活用した音楽授業を5つピックアップしてご紹介します。 「音楽の授業で生徒用タブレットをどのように活用すべきか分からない」とお悩みの先生方の参考になれば幸いです。 目次①【雨の音】創作授業②【オリジナルチャイム】創作授業③「きらきら星変奏曲」鑑賞・創作授業④【ケチャ】鑑賞・創作授業⑤「四季」より「春」の鑑賞授業 日々の授業にパッと取り入れられるICT活用例はこちら ①【雨の音】創作授業 クローム音楽実験ラボ(Chrome Mus ...
ReadMore
ゲーム・クイズ
2023/4/5
面白い!すぐできる!音楽授業ネタおすすめ5選
元音楽教員めりーです。 「授業に楽しい活動を取り入れたいけれど、準備する時間がない」とお悩みの先生方は必見! この記事では、これまでに当サイトやnoteで公開中の音楽授業ネタから、特におすすめの活動を5つ厳選してご紹介します。 目次①クイズ「私は誰でしょう?」②歌詞ビンゴ③「崖の上のポニョ」大賞を決めよう!④音楽マッチングゲーム(神経衰弱)⑤イントロかるた ①クイズ「私は誰でしょう?」 有名な作曲家に関するキーワードを1つずつ提示し、作曲家名を推理させるクイズ形式の活動です。 楽しみながら作曲家について学 ...
ReadMore