※当サイトは広告及びアフィリエイトプログラムにより収益を得ています

鑑賞授業

歌舞伎とは?元中学校音楽教師の分かりやすい解説と授業例

元中学校音楽教師のめりーです。日本版ミュージカルとも言われる歌舞伎について簡単にご説明します。

日本の伝統芸能のひとつ、歌舞伎

TV番組などでも取り上げられることも多いので、伝統芸能の中では比較的とっつきやすくはありますが、いざ音楽の授業で扱うとなると、何をどこまで説明すべきか悩みますよね。

そこで、この記事では、私が歌舞伎に関して説明していたこと授業例をご紹介します。

音楽の授業での説明にお悩みの方はもちろんのこと、歌舞伎について知りたい!という方のお役に立てれば幸いです。

歌舞伎とは?

歌舞伎は、音楽舞踊演技が一体となってできた総合芸術のこと。

出雲阿国が1603年頃に創始したとされる「かぶき踊」が、その元祖とされています。

歌舞伎の歴史には諸説ありますが、一般的な話は以下の通りです。

庶民の間で流行していた「かぶき踊り」は、遊女小屋に取り入れられたり(遊女歌舞伎)、少年たちによって演じられたり(若衆歌舞伎)していたが、遊女や若衆をめぐって武士同士で取り合い、喧嘩が勃発したため、幕府より禁じられてしまった。そこで登場したのが、成人男性中心で行う「野郎歌舞伎」。これが今日の歌舞伎の基礎となっている。

このような歴史があったので、歌舞伎役者は皆男性なのかもしれません。

ちなみに、歌舞伎の語源は「かぶく」(派手な衣装や髪型を好んだり、一風変わった言動を起こしたりすること)だと言われています。

歌舞伎の特徴は?

・歌(音楽)の特徴

歌舞伎の音楽は、伴奏音楽効果音の2種類に分けられます。

それぞれの特徴や役割を簡単にご紹介します。

伴奏音楽:歌舞伎音楽を代表する4つ

歌舞伎音楽には、長唄常磐津節清元節義太夫節(竹本)の4つがあり、演目によってどの音楽を用いるかは異なります。

各音楽の特徴使用する三味線の種類は以下の通りです。

歌舞伎音楽の特徴

上記いずれかの音楽を中心とし、歌舞伎の物語は進んでいきます。

効果音:黒御簾音楽

足音や自然の音など効果音すべてが生演奏で行われているのも歌舞伎の特徴のひとつ。

この効果音を「黒御簾音楽(くろみすおんがく)」と言い、舞台下手の黒御簾と呼ばれる部屋の中で演出に必要な音楽や自然を描写する音を役者の動きと合わせて演奏しています。

・舞(舞踊)の特徴

舞踊は所作事とも言われ、元々は「女形」が演じるものでしたが、今では様々なキャラクターが時にたくましく、時に美しい舞を舞うことで、歌舞伎の物語を盛り上げています。

勧進帳」で弁慶が酒宴の席で舞う「延年の舞」が有名ですね。

・伎(演技)の特徴

細かい動きやしぐさなど、様々な特徴がありますが、ここでは最低限押さえておきたい2つの型をご紹介しておきます。

見得(みえ)

重要な場面や、登場人物の気持ちの高まりを表現したい時に行われる、役者が一瞬静止し、観客に強い印象を与える型を「見得(みえ)」と言います。

歌舞伎と言ったらコレ!というくらい歌舞伎らしさ全開の演技ですよね。

元禄の見得」や「石投げの見得」など、演目によって様々な型が存在します。

六方(ろっぽう)

歩いたり走ったりするときの手足の動きを誇張して美しく表現する演技のことを「六方(ろっぽう)」と言います。

"天・地・東・西・南・北の六方向に手足を動かす"と覚えると漢字を間違えなくて済みます!

役者が花道を退場する時などに用いられることが多いです。

・その他の特徴

隈取(くまどり)

歌舞伎が、他の芸能と明らかに違うのは、何と言っても役者の化粧ですよね。

顔の血管や筋肉を誇張するための独特な化粧法のことを「隈取(くまどり)」と言います。

正義の味方は赤色、人間以外の不気味な存在は青色など、登場人物によって化粧の色が異なることもあるようです。

舞台装置の工夫

歌舞伎の舞台は、その他の芸能と比べ大掛かりで、様々な舞台の仕掛けや演出が観客を物語に引き込みます。

ここではいくつか有名な舞台装置をご紹介しますが、いずれも今日では、歌舞伎に限らずその他様々な芸術の劇場に取り入れられています。

  • 花道
  • 舞台の下手から客席の中を貫いて伸びる廊下のこと。場面に合わせて道や廊下、河岸などに変化する。

  • せり
  • 舞台に切り穴を設けて、舞台下から人物や舞台装置を登場させる、大小さまざまな仕掛けのこと。

  • すっぽん
  • 花道にあるせりのことで、使うのは幽霊や妖術使いなど人間以外の不気味なものに限られている。

  • 廻り舞台
  • 舞台のセットや役者を乗せたまま回転させて場面を転換させることのできる仕掛けのこと。

\上記の内容を1枚のプリントにまとめました!/

歌舞伎の授業は何を主軸とする?

さて、歌舞伎の歴史と特徴を簡単にご紹介しましたが、中学校の音楽授業では、このくらいの情報量がちょうどよく、歌舞伎の全てを教えきることは難しいと私は考えています。

ゆえに、こちらの記事でもご紹介していますが、日本の伝統芸能を授業で扱う際は、主軸を決めた上で授業を組み立てることが大切です。

関連記事
日本の伝統芸能を音楽の授業で扱う際のポイント
日本の伝統芸能を音楽の授業で扱う際のポイント

続きを見る

では、歌舞伎の授業は何を主軸とするのが良いのでしょうか?

授業の進め方は人それぞれなので、この記事では私がこれまで行ってきた授業の主軸を2パターンご紹介します。

①歌舞伎の物語展開

1時間目:歌舞伎の概要説明+「勧進帳」を、展開を予想しながら鑑賞
2時間目:「勧進帳」の鑑賞

という2時間扱いの授業です。

1時間目には歌舞伎について簡単に説明した後、「勧進帳」の前半部分を、登場人物がどのような行動を起こすのかを予想しながら鑑賞させます。

2時間目は「勧進帳」を前回の続きから鑑賞させ、最後に歌舞伎の魅力についてまとめさせます。

物語の展開を予想しながら鑑賞させることで、生徒に歌舞伎の面白さに気付いてほしいという思いで授業を行っていました。

勧進帳」は面白くて分かりやすいので、生徒たちはかなり食いついて、授業後には「生で見てみたい!」というような感想も聞こえてきました。

この授業に関しては、こちらのnote指導略案とワークシート、授業の進め方をご紹介していますので、よければご覧ください。

②能、文楽との比較

1時間目~3時間目:能、文楽、歌舞伎を様々な観点で比較
4時間目:いずれかの伝統芸能についてまとめる

という4時間扱いの授業です。

例えば、「この1時間は能、文楽、歌舞伎の"音楽"を比較する。」というように、各時間で比較する観点を変えて、様々な方向から芸能の特徴や魅力を探ります。

本来は別々の学年、題材で行うことが多いものですが、他の伝統芸能との比較を通して、より深くその芸能を知ってもらいたいという思いで授業を組み立てました。

教師主導ではなく「生徒の気付き」を中心に進めるので、日頃から生徒と活発に意見を交わすような授業を行っていなければ、難しいかもしれません。

この授業に関しては、こちらのnote指導略案とワークシート、その他授業の進め方に関する補足等をご紹介していますので、よければご覧ください。

まとめ 何はともあれ見てみよう!

というわけで、この記事では歌舞伎についての簡単な知識と、授業で扱う際のヒントをご紹介しました。

歌舞伎についてもっと詳しく知りたい!という方は、調べるよりも実際に歌舞伎を見るのが一番手っ取り早いです。

劇場で本物の歌舞伎を見ると、その迫力に感動すること間違いなし!

とは言うものの、なかなか劇場に足を運ぶのは難しいと思うので、そんな方はDVDや公式動画の鑑賞から始めてみましょう。

初めての鑑賞には「勧進帳」がおすすめ!ぜひ最初から最後までじっくり見てみてくださいね。

歌舞伎「勧進帳」のあらすじを元中学校音楽教員が分かりやすく解説!

以上、歌舞伎について元中学校音楽教師の視点で解説しました。

少しでも参考になっていれば幸いです。


歌唱指導のやり方・方法まとめ

歌唱授業

2023/7/26

音楽授業における歌唱指導の方法・音取りのポイント

元中学校音楽教員めりーです。 音楽の授業で必ず行う歌唱指導。 にもかかわらず、どのような流れで進めるのか、どのように音取りを行うのかといった具体的な指導法は誰も教えてくれないですよね。 そこで、この記事では私の歌唱指導の方法をご紹介します。 「これが正解!」というわけではありませんが、少しでも皆さんの参考になれば幸いです。 目次歌唱指導って何するの?歌唱指導(音取り)の基本的な流れ1時間目の流れ2時間目以降の流れ歌唱指導(音取り)のコツコツ①常に全員でなくても良いコツ②表現の工夫につなげるまとめ \合唱指 ...

ReadMore

音楽授業のコツおすすめの常時活動

常時活動

2023/9/14

新年度から始めたい!音楽授業におすすめの常時活動

元音楽教員めりーです。 「授業の進め方が分からない」と悩んでいる時は、毎回の授業で行う常時活動を取り入れるのがおすすめ! 常時活動を行うことで、流れが構築でき、授業がしやすくなるからです。 ですが、常時活動は1年間続けることに意味があるので、どのような活動を取り入れるかは慎重に考えなければなりません。 そこで、この記事では、これまでに当サイトやnoteで公開中の音楽授業ネタから、特におすすめの活動を厳選してご紹介します。 参考にしていただければ幸いです。 目次①5分間ミュージック②ミュージックトラベル③今 ...

ReadMore

中学校音楽科年間指導計画例

授業の基本

2023/9/19

中学校音楽科の年間指導計画例

元中学校音楽教員めりーです。 1年間の授業の内容をあらかじめ計画だてておく、年間指導計画。 教科書会社提供の資料を参考にしながら作成している方も多いと思います。 ですが、実際の学校現場では、どの授業をどのタイミングで、どのくらいの時間をかけて行っているか気になりませんか? そこで、この記事では、私が教員時代に行った1年間の授業内容を基に、各学年の指導計画例をご紹介します。 あくまでも目安ではありますが、参考になれば幸いです。 目次中学校音楽科の年間授業時数年間指導計画(中学1年音楽)年間指導計画(中学2年 ...

ReadMore

ゲーム・クイズ

2023/7/26

盛り上がる!音楽授業におすすめのゲーム「歌詞ビンゴ」

元音楽教師めりーです。 「音楽の授業がイマイチ盛り上がらない」「楽しいゲームを取り入れたいが、どうすればいいか分からない」とお悩みの方は必見! この記事では、絶対に盛り上がる、楽しいゲーム「歌詞ビンゴ」をご紹介します。 目次歌詞ビンゴとは?歌詞ビンゴの進め方①ビンゴカードの作成・配布②曲を流してビンゴ大会!まとめ 歌詞ビンゴとは? 歌詞ビンゴは、その名の通り歌の歌詞を活用したビンゴゲームです。 小学校~高校まで、どの校種でも行うことが可能! 所要時間は10分~30分なので、「授業の合間にちょっと遊びたいな ...

ReadMore

歌舞伎「勧進帳」分かりやすい解説

鑑賞授業

2023/7/26

歌舞伎「勧進帳」のあらすじを元中学校音楽教員が分かりやすく解説!

元中学校音楽教師めりーです。歌舞伎の有名な演目「勧進帳」を解説します。 目次「勧進帳」基本情報「勧進帳」主な登場人物(相関図)「勧進帳」あらすじ解説①役者の登場②勧進帳の読み上げ③山伏問答④弁慶の驚くべき作戦⑤主従の絆の深さ⑥延年の舞⑦役者の退場(飛び六方) 「勧進帳」基本情報 勧進帳の弁慶像(東京都・人形町) 作詞者:三世並木五瓶 作曲者:四世杵屋六三郎 上演時間:約1時間15分 「勧進帳」は、能の「安宅」を原作とした演目で、1870年3月に初演されて以来、様々な役者さんによって演じられている人気作品で ...

ReadMore

授業の基本

2023/7/26

【小学校】音楽を形づくっている要素とは?分かりやすく解説!

元音楽教師めりーです。音楽を形づくっている要素の意味を解説します。 音楽の授業では、音楽を形づくっている要素とイメージとを関連付けて批評したり、表現活動に生かしたりする場面が多々あります。 ですが、音楽の諸要素の中には「旋律」や「音楽の縦と横との関係」など説明が難しい用語もあり、苦労している先生も多いのではないでしょうか。 そこで、この記事では、小学校音楽科学習指導要領で示されている音楽を形づくっている要素を分かりやすくご説明します。 →中学校学習指導要領で示されている要素の解説・授業例 目次音楽を形づく ...

ReadMore

ゲーム・クイズ

2023/7/26

音楽授業ネタ「生活の中にある音」を楽しむ活動例5つ

元音楽教師めりーです。音楽授業ネタを提案します! 私たちの身の回りには、様々な「音」が溢れています。 授業の中でそのような「音」に着目することで、生徒たちは「生活や社会おける音の働き」に関心をもてるようになるはず…! そこで、この記事では「身近な音」や「生活の中にある音」に焦点を当てた活動を5つご紹介します。 どれも簡単に取り入れられるので、音楽授業の参考にしていただけたら幸いです。 目次①この音なんの音?②どんな音が出るかな?③お気に入りの場所で音探し④音素材を使って音楽をつくろう⑤身近な音を取り入れた ...

ReadMore

歌唱授業

2023/9/14

有名なあの童謡も海外生まれ!実は替え歌だと知って驚く曲まとめ

元音楽教師めりーです。 子どもの頃から慣れ親しんでいる歌ってありますよね。 ですが、その中には、海外で作られた曲に日本語の歌詞を当てはめた、いわゆる「替え歌」が存在しているかもしれません。 というわけで、この記事では、そんな外国生まれの童謡の中から、特に有名な曲をピックアップしてご紹介します。 目次アルプス一万尺蝶々ハッピーバースデートゥーユーきらきら星(ABCの歌)鬼のパンツヨドバシカメラの歌 アルプス一万尺 手遊び歌としておなじみ「アルプス一万尺」。 原曲は、アメリカの民謡「Yankee Doodle ...

ReadMore

-鑑賞授業
-,

© 2023 めりー先生の音楽準備室