元中学校音楽教師めりーです。オペラとミュージカルの違いを分かりやすく解説します。
歌やダンス、演劇が楽しめるオペラとミュージカル。
なんとなく「オペラの方が古そう」「ミュージカルの方が楽しそう」など両者が別物であることは分かっているものの、どこがどう違うのか分からない!という方も多いのではないでしょうか。
そこで、この記事では私が教員時代に授業で説明していたことを基に、オペラとミュージカルの違いを解説します。
オペラとは?
オペラは、歌を中心に物語が進む歌劇のこと。
演劇と同じように、華やかな衣装に身を包んだ出演者が舞台上で演技をしますが、大半の部分(特に役柄の感情表現)が歌手による歌唱で進められるのが特徴です。
ミュージカルとは?
ミュージカルとは、音楽とセリフ、ダンスを合わせた演劇のこと。
音楽が主体のオペラとは異なり、ミュージカルは演劇が主体で、役者が歌ったり踊ったりしながら物語が進行します。
まだ違いがよく分からないですよね…実は、オペラとミュージカルの違いを知るためのカギは、その成立背景にあるので、簡単に紹介します。
オペラとミュージカルの成立背景は?

オペラは、16世紀のイタリアで「ギリシア悲劇を復活させよう!」とした人々が生み出した音楽劇が始まりと言われています。
当時の音楽は「王や貴族のためのもの」で、オペラも貴族や上流階級に向けた舞台芸術でした。
ですが、革命期に入り、市民の力が増したことで、音楽も「市民のためのもの」となります。
そこで、「オペラをより大衆にも分かりやすく!」と18世紀に誕生したのがオペレッタです。
このオペレッタがアメリカに渡り、そこにポピュラー音楽などの様々な要素が加わってできたのが、ミュージカル。
ミュージカルが今のような形で上演されるようになったのはオペラの誕生から随分と時間が経った19世紀になってからです。
この成立背景を踏まえ、改めてオペラとミュージカルの違いを見ていきましょう。
オペラとミュージカルの違いは?
①歌い方(発声方法)
オペラでは「歌」が重視されているので、歌手はマイクを使用しません。(そもそもオペラが誕生した当時はマイクはなかったはず)
ゆえに、自分の声を遠くの席まで届けなければならず、ベルカント唱法と呼ばれる独特な発声方法で歌います。
一方、ミュージカルの役者はマイクを使用するので、地声やミックスボイスなど、普段と近い発声で歌っても問題ありません。
オペラは「歌劇」なので、登場人物のセリフにメロディが付いていることが多く、物語の進行上「歌」は欠かせません。
ミュージカルの場合は、セリフ主体で物語が進んでいく中、登場人物の感情が高ぶった場面で「歌」や「ダンス」を取り入れることが多いです。「さっきまで話していたのに急に歌いだした!」と感じるのは、そのためですね。
②BGM
オペラの上演中は、舞台と客席の間のオーケストラピットでオーケストラが歌声に合わせて生演奏しています。
一方、ミュージカルでは、あらかじめ録音された音楽や効果音を使用することが多いです。(もちろん生演奏の場合もあります)
③出演者の役割
オペラ歌手の主な役割は「歌うこと」で、ソプラノやテノールなどの声部(声のパート)に分かれて独唱や重唱を行います。
ゆえに、ダンスはダンサー、合唱は合唱団というようにそれぞれの役を専門キャストが担っています。
一方、ミュージカルでは、全ての役者が歌もセリフもダンスも行います。
「歌」だけに体力を使うわけにはいかないので、マイクを使用するのかもしれませんね。
④ストーリー
「ギリシャ悲劇の復活を!」との思いから誕生したオペラには悲劇が多く、ショービジネスとして誕生したミュージカルには喜劇が多いです。
ただ、全部が全部というわけではなく、オペラにも喜劇はありますし、ミュージカルにも悲劇はあります。
⑤上演時間・公演状況
オペラの上演時間は、2~4時間くらい。
その間マイクも使わずに歌う歌手の体力消耗は激しく、公演は1日に1度で、ひとつの作品の公演期間も長くはありません。
ミュージカルの上演時間は、2~3時間くらい。
「昼の部」「夜の部」のように1日に複数回公演が行われることも多く、一つの作品も長期間にわたり上演されています。
オペラとミュージカルを見比べよう!
さて、オペラとミュージカルの違いを説明しましたが、同じ題材のオペラとミュージカルを比較鑑賞すると、その違いがより明確に分かります。
ここでは、オペラ「アイーダ」とミュージカル版「アイーダ」のダイジェストをご紹介しますので、ぜひ見比べてみてください。
まとめ オペラとミュージカルは別物!
この記事ではオペラとミュージカルの違いをご紹介しました。
改めてまとめるとこんな感じ。

成立背景や特徴を理解すると、両者は全く別物ということがお分かりいただけるかと思います。
それぞれに良さがあるので、どちらの鑑賞も楽しんでいただけたら嬉しいです。
ちなみに、私は音楽の授業の中で、オペラとミュージカルの比較鑑賞をしていました。
以下の授業例には、今回の解説を1枚のプリントにまとめたものも載せてありますので、よければこちらからご覧ください。
というわけで、今回の記事は以上です。
最後までご覧いただきありがとうございました。
歌唱授業
2023/7/26
音楽授業における歌唱指導の方法・音取りのポイント
元中学校音楽教員めりーです。 音楽の授業で必ず行う歌唱指導。 にもかかわらず、どのような流れで進めるのか、どのように音取りを行うのかといった具体的な指導法は誰も教えてくれないですよね。 そこで、この記事では私の歌唱指導の方法をご紹介します。 「これが正解!」というわけではありませんが、少しでも皆さんの参考になれば幸いです。 目次歌唱指導って何するの?歌唱指導(音取り)の基本的な流れ1時間目の流れ2時間目以降の流れ歌唱指導(音取り)のコツコツ①常に全員でなくても良いコツ②表現の工夫につなげるまとめ \合唱指 ...
ReadMore
常時活動
2023/9/14
新年度から始めたい!音楽授業におすすめの常時活動
元音楽教員めりーです。 「授業の進め方が分からない」と悩んでいる時は、毎回の授業で行う常時活動を取り入れるのがおすすめ! 常時活動を行うことで、流れが構築でき、授業がしやすくなるからです。 ですが、常時活動は1年間続けることに意味があるので、どのような活動を取り入れるかは慎重に考えなければなりません。 そこで、この記事では、これまでに当サイトやnoteで公開中の音楽授業ネタから、特におすすめの活動を厳選してご紹介します。 参考にしていただければ幸いです。 目次①5分間ミュージック②ミュージックトラベル③今 ...
ReadMore
授業の基本
2023/9/19
中学校音楽科の年間指導計画例
元中学校音楽教員めりーです。 1年間の授業の内容をあらかじめ計画だてておく、年間指導計画。 教科書会社提供の資料を参考にしながら作成している方も多いと思います。 ですが、実際の学校現場では、どの授業をどのタイミングで、どのくらいの時間をかけて行っているか気になりませんか? そこで、この記事では、私が教員時代に行った1年間の授業内容を基に、各学年の指導計画例をご紹介します。 あくまでも目安ではありますが、参考になれば幸いです。 目次中学校音楽科の年間授業時数年間指導計画(中学1年音楽)年間指導計画(中学2年 ...
ReadMore
ゲーム・クイズ
2023/7/26
盛り上がる!音楽授業におすすめのゲーム「歌詞ビンゴ」
元音楽教師めりーです。 「音楽の授業がイマイチ盛り上がらない」「楽しいゲームを取り入れたいが、どうすればいいか分からない」とお悩みの方は必見! この記事では、絶対に盛り上がる、楽しいゲーム「歌詞ビンゴ」をご紹介します。 目次歌詞ビンゴとは?歌詞ビンゴの進め方①ビンゴカードの作成・配布②曲を流してビンゴ大会!まとめ 歌詞ビンゴとは? 歌詞ビンゴは、その名の通り歌の歌詞を活用したビンゴゲームです。 小学校~高校まで、どの校種でも行うことが可能! 所要時間は10分~30分なので、「授業の合間にちょっと遊びたいな ...
ReadMore
鑑賞授業
2023/7/26
歌舞伎「勧進帳」のあらすじを元中学校音楽教員が分かりやすく解説!
元中学校音楽教師めりーです。歌舞伎の有名な演目「勧進帳」を解説します。 目次「勧進帳」基本情報「勧進帳」主な登場人物(相関図)「勧進帳」あらすじ解説①役者の登場②勧進帳の読み上げ③山伏問答④弁慶の驚くべき作戦⑤主従の絆の深さ⑥延年の舞⑦役者の退場(飛び六方) 「勧進帳」基本情報 勧進帳の弁慶像(東京都・人形町) 作詞者:三世並木五瓶 作曲者:四世杵屋六三郎 上演時間:約1時間15分 「勧進帳」は、能の「安宅」を原作とした演目で、1870年3月に初演されて以来、様々な役者さんによって演じられている人気作品で ...
ReadMore
授業の基本
2023/7/26
【小学校】音楽を形づくっている要素とは?分かりやすく解説!
元音楽教師めりーです。音楽を形づくっている要素の意味を解説します。 音楽の授業では、音楽を形づくっている要素とイメージとを関連付けて批評したり、表現活動に生かしたりする場面が多々あります。 ですが、音楽の諸要素の中には「旋律」や「音楽の縦と横との関係」など説明が難しい用語もあり、苦労している先生も多いのではないでしょうか。 そこで、この記事では、小学校音楽科学習指導要領で示されている音楽を形づくっている要素を分かりやすくご説明します。 →中学校学習指導要領で示されている要素の解説・授業例 目次音楽を形づく ...
ReadMore
ゲーム・クイズ
2023/7/26
音楽授業ネタ「生活の中にある音」を楽しむ活動例5つ
元音楽教師めりーです。音楽授業ネタを提案します! 私たちの身の回りには、様々な「音」が溢れています。 授業の中でそのような「音」に着目することで、生徒たちは「生活や社会おける音の働き」に関心をもてるようになるはず…! そこで、この記事では「身近な音」や「生活の中にある音」に焦点を当てた活動を5つご紹介します。 どれも簡単に取り入れられるので、音楽授業の参考にしていただけたら幸いです。 目次①この音なんの音?②どんな音が出るかな?③お気に入りの場所で音探し④音素材を使って音楽をつくろう⑤身近な音を取り入れた ...
ReadMore
歌唱授業
2023/9/14
有名なあの童謡も海外生まれ!実は替え歌だと知って驚く曲まとめ
元音楽教師めりーです。 子どもの頃から慣れ親しんでいる歌ってありますよね。 ですが、その中には、海外で作られた曲に日本語の歌詞を当てはめた、いわゆる「替え歌」が存在しているかもしれません。 というわけで、この記事では、そんな外国生まれの童謡の中から、特に有名な曲をピックアップしてご紹介します。 目次アルプス一万尺蝶々ハッピーバースデートゥーユーきらきら星(ABCの歌)鬼のパンツヨドバシカメラの歌 アルプス一万尺 手遊び歌としておなじみ「アルプス一万尺」。 原曲は、アメリカの民謡「Yankee Doodle ...
ReadMore