この記事では、私が授業で説明していたこと等を基に、能についてざっくり解説し、簡単な授業例をご紹介します。
説明内容も授業例も「私だったらこうするよ」という内容ですが、少しでも参考になれば幸いです。
能についてまとめたプリントは以下のnote(有料)で紹介しています。
能とは?
能は歴史や伝説を題材とした歌舞劇のことです。
似たような言葉に「能楽」というものがありますが、能=能楽ではありません。
能楽は、能と狂言の総称なので、能は能楽の中の一つの分野だということを授業の最初にしっかり伝えてあげると良いと思います。
能と狂言は、どちらも同じ能舞台で上演されますが、能は前述の通り歌舞劇で、狂言はより世俗的な話を題材とした喜劇です。
例えるなら、能はオペラ、狂言はコントという感じでしょうか。
どちらも「能楽」という一つの芸能の一部ですが、その特徴は大きく違うので、能を授業で扱う際には、狂言も合わせて紹介するのがおすすめです。
授業でおさえたい、能の特徴
ここからは、能を授業で扱う際に最低限おさえておきたい事項をピックアップしてご紹介します。
・シテとワキ
能では、主な登場人物(主役)をシテと呼びます。
シテは、「羽衣」の天女のような超自然的なものや「安宅」の弁慶のような現実の人間(ヒーロー)を演じることもあります。
一方、シテに次ぐ準主役をワキと呼びます。
ワキは、シテの話を聞き出す役なので、ほとんど目立つことはありませんが、物語の進行に不可欠な存在です。
・面(おもて)
能において何と言っても特徴的なのは「面(おもて)」だと思います。
能面とも呼ばれ、シテが、超自然的なものを演じる際にかけているものです。(人間を演じる際など、かけていないこともあります)
一見無表情にも見える面ですが、角度の違いによって表情が変わって見えるのが魅力です。
私は授業の際に能面の様々な角度の写真を見せて、表情の違いを感じられるようにしていました。(用意できるなら、実際の能面を使って、表情クイズみたいな活動をやっても面白そうです)
・地謡(じうたい)
能の音楽の中で、声楽部分を「謡(うたい)」と言い、謡は物語の進行において重要な役割を担っています。
謡を担当するのは「地謡(じうたい)」と呼ばれる、8人からなる斉唱グループで、主に登場人物の心理描写や情景描写をうたっています。
・囃子(はやし)
能の音楽の中で、器楽部分を担っているのが「囃子(はやし)」です。
能における囃子は、太鼓、大鼓(おおつづみorおおかわ)、小鼓(こつづみ)、笛の4種類の楽器で編成されています。
・舞
能において、謡や囃子などの音楽的要素とともに大事なものが「舞」です。
中之舞(ちゅうのまい)や序之舞(じょのまい)、神楽(かぐら)など、演じる役柄や物語の内容によって様々な種類の舞が存在します。
・能舞台
能舞台には、「本舞台が正方形である」「橋掛かりがある」など、いくつかの特徴があります。
また、かつては屋外にあった名残から、舞台に屋根が付いていて、周りに白い砂が敷かれていることもあります。
それぞれの特徴を紹介するだけでなく、なぜそのような形になったのかについてもしっかり説明してあげると良いと思います。
能の授業例
さて、能についてざっくりご説明しましたが、ここからは能を題材とする場合の授業例2パターンを簡単にご紹介します。
あくまで「こんな授業はいかがでしょうか?」という提案ですので、参考程度に読んでいただければ幸いです。
①謡に焦点を当てた授業
音楽の授業なので、やはり能の音楽的要素に焦点を当てるのが良いのでは?と思います。
例えば、能の音楽の中で最も特徴的なのは謡なので、謡の体験活動を取り入れながら授業を進めていくのはいかがでしょうか。
2時間扱いで、1時間目は謡の体験、2時間目は能についての概要説明と鑑賞といったイメージです。
ただ、謡をマスターするのは簡単なことではないので、中途半端な体験で誤った認識につながる危険性もあります。
お手本となるDVDを用意したり、ゲストティーチャーを呼んだり、何かしらのフォローが必要かと思います。
②歌舞伎、文楽との比較授業
同じ伝統芸能である歌舞伎や文楽とは互いに影響を受け合いながら発展してきたので、比較鑑賞を通して能の特徴や魅力を探る授業も良さそうです。
例えば、4時間扱いで、1時間目~3時間目は各芸能を様々な観点で比較し、4時間目にいずれかの芸能についてまとめるという流れはいかがでしょうか?
比較鑑賞がメインなので広く浅くの内容になってしまいますが、伝統芸能に興味をもってもらうことにはつながりそうです。
実は、この授業例はnote(有料)で公開しているので、ご興味がある方はご覧いただければと思います。
まとめ
さて、能の簡単な解説と授業例は以上です。
かなりざっくりとした内容にはなってしまいましたが、少しでもお役に立てていれば幸いです。
関連記事
-
日本の伝統芸能を音楽の授業で扱う際のポイント
続きを見る
note「めりー先生の音楽室」へ
音楽の授業に役立ちそうなもの等を紹介しています!
↓ ↓ ↓
授業ネタ
2024/7/30
お蔵入りにした音楽授業アイディア(私が教員時代にやってみたかったこと)
元中学校音楽教員めりーです。 私には、教員時代に思い付いたものの出来なかった授業や、教員を辞めてからふと思い付いた授業アイディアがいくつかあります。 今はもう教員を辞めてしまい実践は不可能ですが、このアイディアが先生方のお役に立てるのでは?と思い、ブログに書き留めることにしました。 学習指導要領や教科書、年間指導計画などは抜きにして、単純に「こんな音楽の授業をやってみたかった!」という内容ですので、参考にされる際には自己責任でお願いします。 目次私がやってみたかった授業アイディア・絵に合う音楽を選んでディ ...
ReadMore
授業の基本
2024/7/30
音楽授業の必要性について。元教員が考える「学校で音楽を学ぶ理由」
元中学校音楽教員めりーです。 時折耳にする「音楽の授業はいらない」という意見…元音楽教員としては少し複雑な気持ちになります。 というわけで、今回は永遠のテーマとも言える「なぜ学校で音楽を学ぶのか」について私なりの思いをまとめてみます。 一個人の意見ではありますが、音楽の先生方は、生徒から「どうして音楽の授業が必要なの?」と聞かれることもあると思うので、そんなときの受け答えのヒントとしていただければ幸いです。 目次将来役に立ててほしいから音楽の授業があるわけではない私が思う「学校で音楽を学ぶ理由」①様々な音 ...
ReadMore
鑑賞授業
2024/7/24
オペレッタとは?オペラとの違いや有名な曲も合わせて解説
元中学校音楽教員めりーです。 この記事では、オペレッタとは何かについて、オペラとの違いやそれぞれの代表曲と合わせて解説します。 音楽を勉強中の方や、授業での説明にお悩みの先生方の参考になれば幸いです。 目次オペラとは?オペレッタとは?オペレッタとオペラの違いは?オペレッタの有名な曲2選①「こうもり」序曲①「天国と地獄」序曲まとめ オペレッタについて説明する前に、まずはオペラについてです。 オペラとは? オペラは歌を中心に物語が進む歌劇のことです。 演劇と同じように、華やかな衣装に身を包んだ出演者が舞台上で ...
ReadMore
自習課題
2024/7/24
noteで公開中の自習プリント(中学音楽)を紹介します!
元中学校音楽教員めりーです。 急に音楽の授業が行えなくなった場合に役立つ自習プリント。 「いざという時のために用意しておきたいけど、忙しくて作る暇がない」という先生も多いのではないでしょうか? そこで、この記事では、noteで公開中の授業資料から、すぐに使える音楽の自習プリントをご紹介します。 いずれも有料にはなりますが、一度購入していただければ長く使えるので、お役立ていただければ幸いです。 目次まずはこれ!音楽の自習プリント音楽記号・用語一覧プリント練習問題付き!楽典まとめプリントお楽しみ課題!クロスワ ...
ReadMore
歌唱授業
2024/7/24
音楽授業における歌唱指導の方法・音取りのポイント
元中学校音楽教員めりーです。 音楽の授業で必ず行う歌唱指導。 にもかかわらず、どのような流れで進めるのか、どのように音取りを行うのかといった具体的な指導法は誰も教えてくれないですよね。 そこで、この記事では私の歌唱指導の方法をご紹介します。 あくまで私の進め方であり、「これが正解!」というわけではありませんが、少しでも皆さんの参考になれば幸いです。 目次歌唱指導って何するの?歌唱指導(音取り)の基本的な流れ1時間目の流れ2時間目以降の流れ歌唱指導(音取り)のコツコツ①常に全員でなくても良いコツ②表現の工夫 ...
ReadMore
授業の基本
2024/7/24
【中学音楽】年間指導計画作成のポイントと1年間の授業計画例
元中学校音楽教員めりーです。 この記事では、年間指導計画作成のポイントと、1年間の授業計画(例)をご紹介します。 あくまで私が勤務していた頃の話にはなってしまいますが、参考にしていただければ幸いです。 目次年間指導計画作成のポイント①年間の授業時数を意識する②学校行事を確認する③評価の時期から逆算する1年間の授業計画例中学1年音楽 授業計画例中学2年音楽 授業計画例中学3年音楽 授業計画例(補足1)各題材で扱う教材について(補足2)実技テストについてまとめ 年間指導計画作成のポイント まずは、私が年間指導 ...
ReadMore
授業ネタ
2024/7/24
盛り上がる!音楽授業におすすめのゲーム「歌詞ビンゴ」
元中学校音楽教員めりーです。 音楽授業に取り入れると盛り上がりそうな、簡単なゲーム活動例を思い付いたので、ご紹介します。 その名も「歌詞ビンゴ」です。 授業のスキマ時間やお楽しみ会などに取り入れられるのでは?と思うので、参考にしていただければ幸いです。 目次歌詞ビンゴとは?歌詞ビンゴの進め方①ビンゴカードの作成・配布②曲を流してビンゴ大会!まとめ 歌詞ビンゴとは? 歌詞ビンゴは、その名の通り歌の歌詞を活用したビンゴゲームです。 所要時間は10分~30分で、準備もそんなに必要ないので、「少し時間が余りそうだ ...
ReadMore
鑑賞授業
2024/7/24
歌舞伎「勧進帳」のあらすじを元中学校音楽教員がざっくり解説
元中学校音楽教員めりーです。 この記事では、歌舞伎の有名な演目「勧進帳」のあらすじを簡単にご紹介します。 音楽を勉強中の方や、授業準備中の先生方の参考になれば幸いです。 目次「勧進帳」基本情報「勧進帳」主な登場人物(相関図)「勧進帳」あらすじ解説①役者の登場②勧進帳の読み上げ③山伏問答④弁慶の驚くべき作戦⑤主従の絆の深さ⑥延年の舞⑦役者の退場(飛び六方)まとめ 「勧進帳」を主教材とした鑑賞授業の進め方やワークシートは以下のnote(有料)で紹介しています。 「勧進帳」基本情報 作詞者:三世並木五瓶 作曲者 ...
ReadMore