今回は、速度に関する記号や用語をご紹介します。
楽譜上でよく見かける記号・用語のみをピックアップしているので、ざっくりとした説明にはなりますが、音楽を勉強中の方の参考になれば幸いです。
目次
そもそも音楽における「速度」とは?
音楽において「速度」とは、曲を演奏するスピードや、その変化のことです。
演奏するスピードによって曲の雰囲気や印象は異なるので、音楽を形づくっている重要な要素のひとつだと言えます。
速度記号・用語は楽譜のどこに書いてある?
速度記号・用語は、楽譜の冒頭や、楽譜のあらゆる場所に書かれています。
基本的には、最初に指示された通りの速度で演奏し始めますが、途中で速度に関する記号・用語が書かれていれば、その指示に従います。
知らないと大事な指示を見逃してしまうことになるので、速度に関する記号・用語を覚えておくことは大切だと思います。
速度を表す記号・用語
音楽の速度を表す方法には、
- 数字で表す
- ことばで表す
の2パターンがあります。
①数字で表す
上記のように、「♩=80」と書かれている場合は、1分間に四分音符を80回演奏する速さを意味しています。
自力で数えるのは大変なので、練習時にはメトロノームを使用します。
速度の基準となる音符は、拍子が基準としている音符と同じ場合が多いです。
例えば、4分の4拍子など四分音符を基準とする拍子なら速度も四分音符、2分の2拍子など二分音符を基準とする拍子なら速度も二分音符を基準に表します。
ただし、速度の基準音符と拍子の基準音符が一致しない場合もあります。
Aは、8分の6拍子が3拍でひとまとまりと考えるのが一般的であるため、Bは四分音符を基準とすると♩=40となり、速度が遅すぎで分かりづらいため、速度と拍子の基準音符が異なります。
同じ数字でも基準となる音符が異なれば速度も異なるので、どの音符を基準として速度が表されているかをしっかり確認することが大切です。
②ことばで表す
速度は、イタリア語などを用いて表されることもあります。
しかし、上記の「Andante(「ゆっくり歩くような速さで」という意味)」のように、具体的な数字で示されているわけではありません。
ゆえに演奏者は、その言葉がもつ意味やニュアンスを汲み取って、速度と曲の雰囲気を表現する必要があります。
とは言っても、なんとなく「この用語よりこの用語の方が速い」みたいな順番はあるので、参考までに、一般的な用語を遅いものから順に載せておきます。
- Largo(ラルゴ):ゆるやかに
- Lento(レント):遅く
- Adagio(アダージョ):ゆっくりと
- Andante(アンダンテ):ゆっくり歩くような速さで
- Moderato(モデラート):中ぐらいの速さで
- Allegro(アレグロ):速く
- Presto(プレスト):急速に
上記の数字とことばで表す2つの方法を組み合わせ、「Moderato ♩=80」などと表記している楽譜もあります。
速度の変化を指示する用語
次に、曲中で速度を変化させてほしい時に用いられる用語をいくつかピックアップしてご紹介します。
速さを次第に変化させる
以下の用語は、頻繁に使われる(楽譜には省略形で記されていることも多い)ので、覚えておくと便利です。
- rit./ritardando(リタルダンド):だんだん遅く
- rall./rallentando(ラレンタンド):だんだん遅く
- accel./accelerando(アッチェレランド):だんだん速く
- stringendo(ストリンジェンド):だんだんせき込んで(だんだん速く)
続きを見る「アッチェレランド」と「ストリンジェンド」の違いをざっくり解説
これまでの速さと比較して指示する
これまでの速さと比較する場合は、「più(より多く)」、「meno(より少なく)」という言葉を用いて表すことがあります。
例えば、「più Allegro」は直訳すると「速さをより多く」となるので、「今までより速く」という意味で使われます。
逆に「meno Allegro」は「速さをより少なく」となるので、「今までより遅く」という意味になります。
また、「mosso(動き)」という単語を用いて、以下のように速度を表すこともあります。
- più mosso(ピウ モッソ):今までより速く(動きをより多く)
- meno mosso(メノ モッソ):今までより遅く(動きをより少なく)
強弱の変化も同時に指示する
速度の変化と同時に、強弱の変化も合わせて指示する用語もあるので、少しご紹介しておきます。
- smorzando(スモルツァンド):消えるように/だんだん弱くしながら遅く
- calando(カランド):次第におだやかに/だんだん弱くしながら遅く
- allargando(アッラルガンド):次第に幅広く/だんだん遅くしながら強く
変更した速度を戻す
曲の途中で変更した速度を元に戻してほしい時は、以下のいずれかの用語を用いて指示することがあります。
- a tempo(ア テンポ):元の速さで
- Tempo Ⅰ(テンポ プリモ):最初の速さで
※a tempoは速度を変更した直前の速さ、Tempo Ⅰは、曲の最初の速さに戻してほしい時に使われます。
意味を補足する付加語・接尾語
付加語
前述の速度に関する用語に付け加えて意味を補足するものを付加語と言います。
付加語にはいくつか種類がありますが、ここでは、非常によく使われるものを2つだけピックアップしてご紹介します。
- poco(ポコ):少し
- molto(モルト):非常に
(例)「poco rit.(少し、だんだん遅く)」など
(例)「molto rit.(非常に、だんだん遅く)」など
接尾語
速度の用語は、語尾を変化させることで、その意味を強めたり弱めたりすることがあります。
例えば、「きわめて」という意味をもつ接尾語「issimo」を使うと、
というように、「Presto」の意味を強めることができます。
逆に、「やや」という意味の接尾語「etto」を使って、
と、「Allegro」の意味を弱めることもできます。
※意味を弱める時には「ino(やや)」という接尾語を使うこともあります。(例:Andantino(やや遅く))
速度に関する記号・用語一覧【まとめ】
改めて、今回ご紹介した記号や用語を一覧にまとめてみます。
記号・用語 | 読み方 | 意味 |
Largo | ラルゴ | ゆるやかに |
Lento | レント | 遅く |
Adagio | アダージョ | ゆっくりと |
Andante | アンダンテ | ゆっくり歩くような速さで |
Moderato | モデラート | 中ぐらいの速さで |
Allegretto | アレグレット | やや速く |
Allegro | アレグロ | 速く |
Presto | プレスト | 急速に |
Prestissimo | プレスティッシモ | きわめて速く |
accel. | アッチェレランド | だんだん速く |
stringendo | ストリンジェンド | だんだんせき込んで |
rit. | リタルダンド | だんだん遅く |
rall. | ラレンタンド | だんだん遅く |
Più mosso | ピウ モッソ | 今までより速く |
Meno mosso | メーノ モッソ | 今までより遅く |
smorzando | スモルツァンド | だんだん弱くしながら遅く |
calando | カランド | だんだん弱くしながら遅く |
smorzando | アッラルガンド | だんだん遅くしながら強く |
a tempo | ア テンポ | 元の速さで |
TempoⅠ | テンポプリモ | 最初の速さで |
poco rit. | ポコ リタルダンド | 少し、だんだん遅く |
molto rit. | モルト リタルダンド | 非常に、だんだん遅く |
さて、この記事では速度に関する記号や用語をざっくりとご紹介しました。
紹介しきれなかった記号や用語もまだまだありますが、少しでも参考になっていれば幸いです。
続きを見るfffとは?音楽に欠かせない強弱記号・用語一覧(読み方と意味まとめ)
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