音楽の授業で必ず行う歌唱指導。
にもかかわらず、どのような流れで進めるのか、どのように音取りを行うのかといった具体的な指導法は誰も教えてくれないですよね。
そこで、この記事では私の歌唱指導の方法をご紹介します。
あくまで私の進め方であり、「これが正解!」というわけではありませんが、少しでも皆さんの参考になれば幸いです。
歌唱指導って何するの?
ひとえに歌唱指導と言っても、その具体的な内容は、題材目標や教材によって様々です。
ただ、どのような題材(教材)であっても、以下の3つは必ず行っていました。
- 音取り
- 歌詞や作曲背景の理解
- 表現の工夫
歌詞や作曲背景の理解・表現の工夫に関しては、教材によって内容も進め方も異なるので、各教材の授業例をご覧いただくのが良いかと思います。
曲名をクリックしていただくと、公開中の授業例(note有料記事)ページに飛びます。
音取りに関してはどの教材でもほぼ同じなので、次項でその基本的な流れをご紹介します。
歌唱指導(音取り)の基本的な流れ
教材のボリュームによって異なりますが、1曲の音取りにかかる時間は、だいたい1~3時間程度です。
1時間目と、2時間目以降では流れが微妙に異なるので、それぞれご説明します。
1時間目の流れ
①範唱を聴かせる
まずは、楽譜を見させながら範唱を聴かせ、曲のイメージをつかませます。
「教師による範唱」ではなく、楽譜に忠実な音源(教科書準拠CDなど)を用いる方が良いです。
また、聴き終わった後は、生徒に「どう感じた?」「どのようなイメージの曲?」と問いかけ、"聴いて終わり"にならないようにすることが大切です。
②曲の基本事項を確認する
楽譜の冒頭には、曲に関する情報が詰まっています。
それらの情報を知ることは、これから表現の工夫をする際にも役立つので、必ず練習に入る前に全体で確認するようにします。
最低限、確認すべき事項は以下の5つです。
・調
・速度
・その他演奏指示
・歌唱(合唱)形態
③音楽を分ける
歌唱でも器楽演奏でも、音楽の練習の基本は、部分練習だと思います。
したがって、これからの部分練習が行いやすくなるよう、最初の授業で音楽を部分ごとに分ける作業を行います。
教科書のように、すでに練習番号を振ってくれている楽譜を使う場合は、練習番号にマーカーで印を付けさせ、先生自身が練習番号を振る場合は、「○○~がA、○○~がB…」と伝え、楽譜に書き込ませるようにします。
④授業で扱う箇所と目的を確認する
ただ「荒城の月を練習するよ」と言うだけでは、生徒は何の課題意識も持たずに、ダラダラと声を出すだけになってしまいます。
練習に入る前には、
・練習目的:何のために、何を意識して(強弱や歌詞の意味など)
・練習内容:どのように(パート練習or全体練習など)
を伝え、全体で共有することが大切です。
尚、音取りは目的ではなく、手段なので、授業の目標を「○○の音取りをする」とするのはNGです。
⑤音取りをする
4小節~8小節くらいの1フレーズごとに指導をしていきます。
まねうたい(教師の範唱に続いて歌わせる)→生徒のみ(ピアノで単音を弾く)→生徒のみ(伴奏に合わせて)
という流れで行うとスムーズです。
合唱の場合は、教師が他パートの旋律を歌ってみたり、アカペラで歌わせたりと、つられないようにするための練習も取り入れます。
音取りの際のポイントは、
- 常に良い発声で
- 強弱やアーティキュレーションにも注意
- 音をのばす長さや休符の数も確認
の3つです。
また、音取りの際には、楽譜とペン1本を持たせた状態で、ピアノの周り(教師の視界の範囲内)に集めるのが効果的です。
難しい箇所や注意点を楽譜に書き込むことを徹底させておけば、パート練習の際にも自主的に練習できるようになると思います。
⑥全体で通して歌わせる
練習前に提示した目的を再度確認した後、通して歌わせます。
このときに、「できたこと」と「できなかったこと」を楽譜や振り返りカードに記入させておくと、次回の授業に役立ちます。
2時間目以降の流れ
①前回の内容を確認する
前時の復習として、前回練習した箇所を歌わせ、再度指導を行います。
②授業で扱う箇所と目的を確認する
1時間目と同様、練習箇所や目的、内容を確認してから練習に入るようにします。
その際、該当箇所の範唱を聴かせ、イメージをつかませておくと良いです。
③音取り/歌唱指導をする
音取りは1時間目と同様の流れで行い、前回の練習箇所からの「つなぎ目」もちゃんと指導します。
音取りが終わった後も様々な歌唱指導を行いますが、いずれもダラダラと歌わせるだけでは何の意味もないので、明確な目的のもと指導を行うと良いです。
④全体で通して歌わせる
一度、この時間に練習した箇所を歌わせ、最後に前回練習した箇所から通して歌わせて、授業のまとめとします。
歌唱指導(音取り)のコツ
コツ①常に全員でなくても良い
音取りの最中、クラスを半分に分けたり、少人数グループを作ったりして互いの歌を聴き合う時間を作ると良いです。
全体で歌っている時よりも自分(他人も)の歌声がよく聴こえるので、良い学習になります。
生徒の実態によっては難しい場合もありますが、1フレーズを1人ずつ歌わせたり、リレー歌いさせたりするのも効果的だと思います。
コツ②表現の工夫につなげる
ずっと歌わせるだけでは、生徒も飽きてしまうので、
・スタッカートが付いているのはなぜ?
・全部フォルテで歌ってみたらどうなる?
・『やさしい風』がもし『激しい風』だったらどう歌う?
など問いかけ、歌詞理解や表現の工夫につながる活動を取り入れると良いです。
他にも、Google Earthなどを用いて実際の風景を見せる(例えば「花」なら隅田川の桜)など、音取りを音取りで終わらせない工夫が大切だと思います。
まとめ
さて、この記事では歌唱指導の方法・音取りのポイントをご紹介しました。
全ての教材に共通することだけをまとめたのでざっくりとした内容にはなってしまいましたが、少しでも参考になっていれば幸いです。
続きを見る楽しい音楽授業を実現するためのポイント(私が意識していたこと)
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