時折耳にする「音楽の授業はいらない」という意見…元音楽教員としては少し複雑な気持ちになります。
というわけで、今回は永遠のテーマとも言える「なぜ学校で音楽を学ぶのか」について私なりの思いをまとめてみます。
一個人の意見ではありますが、音楽の先生方は、生徒から「どうして音楽の授業が必要なの?」と聞かれることもあると思うので、そんなときの受け答えのヒントとしていただければ幸いです。
将来役に立ててほしいから音楽の授業があるわけではない
「音楽の授業なんて将来何の役にも立たない」
「歌手やピアニストになるわけじゃないから、音楽の授業を受けても無駄」
と思っている生徒もいるかもしれませんが、音楽の授業は音楽関係の仕事に就く人を育てるために行われているわけではありません。
私は元音楽教員ですが、小学校~高校の音楽授業を受けていただけでは、音楽の先生になれなかったと思います。
幼い頃から習い事としてピアノや楽典の勉強をしていたからその道に進んだわけで、義務教育で受けた音楽授業が将来の仕事に直接役立ったとは思えません。
ゆえに、将来を見据えた音楽の知識や技能の習得は、音楽授業の一番の目的ではないと私は考えます。
私が思う「学校で音楽を学ぶ理由」
学習指導要領には音楽科の目的がしっかり明記されているので、正確な内容はそちらをご覧いただくとして…
ここでは、あくまで元音楽教員である私が思う「学校で音楽を学ぶ理由」をいくつか記していきます。
「学校で音楽を学ぶ理由」についての考えは人によって違うでしょうし、その時々の状況によって考えが更新されることもあると思います。ゆえに、この記事の内容が必ずしも正しいとは限らず、今後変わることもあるかもしれません。
①様々な音楽と出会えるから
音楽を聴いたり演奏したりすることは、学校の授業でなくてもできます。
ですが、一人だとどうしても興味のある音楽ばかりに偏ってしまい、他のジャンルの音楽を試してみようという気持ちにはなりにくいです。
その点、音楽の授業では世界各国の民族音楽など様々な音楽を扱うので、自分一人だったら知ることがなかったかもしれない音楽と出会うことができるのです。
様々な音楽と出会うことで新たに好きな音楽が見つかるかもしれないし、逆に自分の好きな音楽の良さを再認識する機会になるかもしれません。
「世の中にはこんな音楽があるんだ」と知るだけでも意義があり、それこそが「学校で音楽を学ぶ理由」ではないでしょうか。
②様々な意見や表現方法を知ることができるから
音楽の授業には正解がありません。
同じ音楽を聴いたとしても感じ方は人それぞれですし、歌い方や演奏の仕方など、音楽の表現方法も様々です。
ですが、どの感じ方も、表現方法も、間違いではありません。
一人っきりだと、このことに気付きづらいですが、授業という集団で音楽に触れる経験をすることで、世の中にはいろいろな考え方や感じ方があることを身をもって感じられると思います。
③音楽の「味わい方」を知ることができるから
TV番組や動画サイトなどで音楽を聴いたとしても、音楽の「味わい方」を知らなければ何も感じることはなく、さーっと流れていってしまいます。
表現についても同じで「こんな風に歌いたい!」などと思っても、その方法が分からなければどうしようもありません。
私たちが今、普通に音楽を楽しめているのは、音楽の授業で、ある程度の基礎的な知識や技能、どんなことに着目して音楽を捉えるのか等について学んだからかもしれません。
④感動を一緒に味わえるから
例えば、クラス全員が本気で合唱した時など、音楽の授業の中には、感動を共有できる場面が何度かあります。
誰かと感動を分かち合うという経験は、自分一人で「この音楽は素敵だな」と感動するのとは違うもので、人生の中でそう何度も経験できるものではありません。
そうした経験ができるのも、”皆で一つのものを作り上げる”音楽授業ならではだと思います。
大人になると、自分から行動しない限りは、何十人もの人と一緒に歌ったり演奏したりすることはできなくなるので、ぜひこの経験を大切にしてもらいたいです。
⑤音楽には様々な効果があるから
落ち込んだ時に思いっきり好きな歌を歌うことでモヤモヤが解消されたり、子どもの頃に聴いた音楽を聴くことでその時の光景が鮮明に思い出されたり…
音楽は私たちの感情や記憶に様々な効果をもたらしてくれます。
今は自宅でも気軽に音楽を楽しめるツールがありますが、それでも音楽と出会う機会が少ない人、音楽のもたらす効果に気付く機会がない人もいます。
義務教育の中に音楽の授業があるのは、音楽の力を少しでも多くの人に実感してもらいたい、音楽を通して豊かな心を培ってもらいたいという思いがあるからかもしれません。
「学校で音楽を学ぶ理由」を考えるためのヒント
音楽の授業を行う上で、「何のために音楽の授業をしているのか」について自分なりの答えをもっておくことは非常に大切です。
しかし、いざ考えてみると、いろいろな思いが頭を巡り、なかなか難しいかもしれません。
そんな時にヒントとなるのが、今まさに目の前にいる子どもたちです。
子どもたちに、音楽の授業を通してどうなってほしいか、どのような力を付けてもらいたいかを考えると、答えが見えてくるのではないかと思います。
まとめ
さて、この記事では私が思う「学校で音楽を学ぶ理由」をまとめてみました。
少しでも参考になっていれば幸いです。
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